マッチングサイトの構築

1.マーケットプレイス型マッチングサイトを作ってみた

マッチングサイトにはいろいろな型があります。大きく4つに分類できます。

  1. 仲介型(エージェント型)
  2. 一括見積型(エージェント型)
  3. マーケットプレイス型(プラットフォーム型)
  4. クラシファイド・広告掲載型(プラットフォーム型)

今回、“3.マーケットプレイス型”のデモサイトを作ってみました。

マーケットプレイス(Market Place)というのは、Amazon楽天市場のような“インターネット上のショッピングモール”です。
ショッピングモールに出店したテナントは家賃やコミッション(売上歩合など)を支払うことになりますが、インターネット上のマーケットプレイスでも出店料やコミッションを支払うことになります。
集客し、販売機会を提供しているという観点から、これもマッチングサイトと言え、この出店料やコミッションが収入源となります。

この記事では、実際に構築してみた私が、マーケットプレイス型マッチングサイトの『できること』と『できないこと』などを解説していきます。

2.デモサイトを作った目的

マーケットプレイス型マッチングサイトのデモを作った目的は大きく3つあります。

目的1.漠然とした不安や疑問を解決してほしい

この記事を読めば、次のような人たちの不安や疑問は解決するはずです。

  • マーケットプレイス型マッチングサイトを作りたいと考えている人
  • マッチングサイトを作りたいがどんな仕様にするか悩んでいる人
  • マッチングサイトは外注しなければ作れないと思い込んでいる人
  • WordPressでどこまで構築できるか知りたい人

目的2.マーケットプレイス型の「できないこと」を知ってほしい

「マッチングビジネスを始めたい」とご相談いただく人の7割ほどが、プラットフォーム型(特にマーケットプレイス型)の構想を持っています。私は、エージェント型(仲介型or一括見積型)のマッチングビジネスを奨めていますが、一般的には“マッチングビジネス=マーケットプレイス型”というイメージが強いようです。

もちろん、マーケットプレイス型が馴染むマッチングビジネスのモデルも多くあります。ただ、「マーケットプレイス型は何でもできる(できそう)」というのは間違いです。
確かに、WordPressやプラグインを用いればたいていのことは実現(実装)できてしまいますが、それはサイト運営者のエゴや自己満足、過剰スペックかもしれません。「マーケットプレイス型が高機能でカッコイイから、なんとなくマーケットプレイス型にしたい」という理由ではないですか?ということです。

マーケットプレイス型で『できること』『できないこと』、あなたのマッチングビジネスに『必要なこと』『不要なこと』を比較し、スペックを最適化しましょう。

目的3.無料で構築できることを知ってほしい

このデモサイトの仕様は後述しますが、無料で利用できるツール(WordPressプラグイン含む)のみ利用しています。

知ってもらいたいのは、この程度の機能性なら「WordPress(無料)+プラグイン(無料)+決済サービス(無料)」で構築できるということ。

日本ではあまり知られていない高機能な無料プラグインはたくさんあります。私のような非プログラマーでもノーコード(CSSなどに難解なソースコードを書く必要がない)で構築できます。
「マッチングサイトの制作には特殊な技術(プログラミングなど)が必要だから外注しなければならない」という根拠のない思い込みは捨ててください。

最適なスペックを見極めて、できるだけお金をかけないミニマムスタートを狙いましょう。設備投資は収益が上がってからで間に合います。過剰スペックで200万円を無駄にした私が言うのですからまったくの的外れというわけではないはずです。

3.デモサイト(日本緑化計画)の仕様

サイト名日本緑化計画
URLhttps://hero-biz.com/green/
マッチング対象緑化をしたい人 × 緑化業者
使用ツール・WordPress(無料)
・プラグイン(無料)
・Stripeなど決済サービス(無料)

無料で構築というのがひとつウリですが、当然、レンタルサーバーやドメインの費用、決済時の決済手数料はかかります(それは普通のブログ運営でも同じです)。
なお、デザインはいまいちかもしれませんが、それは私のセンスの問題なので、あくまで機能面でのデモサイトと大目に見てください。

4.マーケットプレイス型マッチングサイトでできること

『できること』『できないこと』の解説に移りますが、無料で構築したわりには高機能だと思います。WordPress × 無料プラグインだけでもこの程度までは作り込めます。

あなたが構築したいマッチングサイトに必要な機能はどれか?なども整理しながら読んでもらえると嬉しいです。

※以下で言う「商品」には、無形の商品(例:庭木の剪定)も含みます。

4-1.提携業者ができること

提携業者、デモサイト日本緑化計画で言うところの“緑化業者”ができることは下記です。

  1. 提携業者登録
  2. 専用ダッシュボードの利用 ※下図参照
  3. 商品の出品(サブスクリプション可) ※無料構築だとひと癖あり
  4. 在庫管理
  5. 売上管理
  6. 販売地域の指定
  7. 送料の設定(地域別・重量別・条件別の無料設定など)
  8. 商品ごとに簡易なアップセル・クロスセルの設定
  9. 割引クーポンの発行
  10. 営業時間の表示設定
  11. 商品ごとのポリシーの設定(配送・返金・キャンセル・返品・交換)
  12. 顧客からの問い合わせへの返信(サイト内のプライベート掲示板)
  13. 顧客からの返金申請処理
  14. サイト管理者への出金申請(Stripe・PayPal・銀行振込)
  15. ブログ執筆

提携業者が利用できるダッシュボード↓

マッチングサイトの構築(提携業者管理画面)

4-2.顧客ができること

顧客、デモサイト日本緑化計画で言うところの“緑化したい人”ができることは下記です。

  1. 会員登録
  2. 商品の購入
  3. 商品代金の支払い(Stripe・PayPal・銀行振込・Paidyなど)
  4. 商品の検索(カテゴリー・地図・価格順・評価順など)
  5. 商品購入後の評価
  6. 返金申請
  7. 提携業者への問い合わせ(サイト内のプライベート掲示板)

4-3.サイト管理者ができること

サイト管理者、デモサイト日本緑化計画で言うところの“私”、つまり、マッチングサイトを運営するあなたができることは下記です。

  1. 商品の出品(サブスクリプション可)
  2. 送料の設定(地域別・重量別・条件別の無料設定など)
  3. 商品代金受け取り(代金はサイト管理者に一旦支払われる)
  4. 顧客からの返金申請処理
  5. 仲介料の設定と自動分配(パーセンテージ・固定・提携業者ごとなど)
    ※提携業者Aと提携業者Bの商品があわせて購入された場合も自動計算可。
  6. 提携業者への出金(手動・自動)
  7. 出金申請の最低額の設定
  8. 出金時の手数料の設定
  9. 提携業者が顧客からの代金を直接受け取る場合の逆出金申請(現金払い・代引きなど)
  10. 提携業者と顧客の監視(やり取りが発生したら都度通知するなど)
  11. 提携業者ごとの権限の設定
  12. ブログ執筆

5.マーケットプレイス型マッチングサイトでできないこと

通常のマーケットプレイスに必要な機能はほぼ備わっていますが、マッチングサイトとしては『できないこと』もあります。
その中には、“ビジネスモデルによっては最重要と言える”こともあるので、特筆すべき4点を解説します。あなたの構想においてこれが不可欠であれば、マーケットプレイス型での構築は難しい(他の型での構築が必要)と考えてください。

5-1.顧客側は商品を登録できない

1点目は、ビジネスモデルについてです。
顧客側(仕事を依頼する側)は商品を登録できません。デモサイト日本緑化計画で言うなら、“緑化をしたい人”です。

Lancers(ランサーズ)CrowdWorks(クラウドワークス)などのクラウドソーシングサイトでは、“仕事を依頼する側”も商品(案件)を登録し、募集することができますが、マーケットプレイス型ではこれができません

マーケットプレイス(売買)の原理原則は、売り手が登録した商品を、買い手が購入し、決済が行われるというものです。
一方のクラウドソーシングサイト(“仕事を依頼する側”が商品を登録)の流れだと、買い手が登録した商品を、買い手自身が購入することになり、原理原則から外れます。だから、マーケットプレイス型では顧客側が案件を登録することはできないのです。

正確には、それを可能にする無料ツールやプラグインは見当たらないため、独自のシステムを作る(外注する)しかないとなります。“マーケットプレイスに必要なツールやプラグインを利用する=マーケットプレイスの原理原則から外れることはできない”と捉えてください。

言い換えると、決済機能を備えないのであれば、Lancers(ランサーズ)CrowdWorks(クラウドワークス)のように、 “仕事を依頼する側”も商品(案件)を登録、募集できるようにすることはできます(決済機能は、請求書や請求メールの別途発行で代替)。

これは、マーケットプレイス型ではなく、SNSや会員限定サイトに決済機能を後付けするようなイメージです。Lancers(ランサーズ)CrowdWorks(クラウドワークス)もインターフェースはSNSやクラシファイドっぽいとも言えますし。

5-2.商品価格は定額

2点目は、商品価格についてです。
受発注前の問い合わせなどで顧客と提携業者がやり取りをする中で、契約条件や商品価格の変更が発生したとします。Lancers(ランサーズ)CrowdWorks(クラウドワークス)では取引相手ごとに修正条件での契約に進めますが、マーケットプレイス型では、特定の顧客だけの条件を修正して決済するということはできません

提携業者は、全体に公開している商品ページの価格を修正し、そこから注文決済してもらわなければなりません(この間に他の顧客が注文する可能性あり)。あるいは、一時的にでも、その顧客のためだけに修正条件での商品を登録するかです。

もっとも、Amazon楽天市場などにも『契約条件の相談』という工程はありませんし、マーケットプレイス型においてはできなくて当然ですが、契約条件相談の工程を盛り込めるものと想定している人は注意してください。

5-3.後払いが得意ではない

3点目は、支払い方法についてです。
Amazon楽天市場に“後払い”という支払方法がないように、マーケットプレイス型には基本的に“後払い”設定ができません

一方、マッチングサイトのジャンルによっては、“先払い”が馴染まない商品もあります。今回のデモサイト日本緑化計画で例示するなら『庭木の剪定』などです。剪定作業が完了してから支払う、“後払い”が一般的だからです。
デモサイトには返金申請機能が備わっているとはいえ、“後払いが一般的である商品”を先払いで購入しなければならないというのは顧客からの不信感につながり、注文を妨げる障壁になりかねません。

しかし、仮に“後払い”設定ができたとしても、私なら“後払い”にはしません。代金の未払いリスクを避けたいからです。
私も何度か経験していますが、マッチングビジネスにおける代金未払いは非常に厄介です。サイト管理者と提携業者のどちらが催促するの?(額によっては訴訟の可能性あり)、未収金はどう按分するの?、どちらが損失計上するの?などの調整に手間がかかります。もちろん、責任の分界点は提携業者との契約書に定めておきますが、杓子定規に進められないケースもあります。
※成功報酬型など“後払い”しか選択できないモデルや、エージェント型など“後払い”が馴染むモデルもあります。

では、どうするか?
システム上、“先払い”設定しかできないのであれば、ビジネスモデルを“先払い”にすればよいだけです。
「お客様からの“先払い”は、日本緑化計画がお預かりし、作業完了後に提携業者に支払います。これによりお客様の“先払い”は担保されますのでご安心ください」
……解決策の一例ではありますが、ものは言い様です。柔軟に最適化しましょう。

5-4.提携業者のノウハウを盗めない

4点目はプラスアルファ、私の個人的な意見です。
私が、まずはエージェント型(仲介型or一括見積型)のマッチングビジネスを奨める理由に関係します。

エージェント型の場合、サイト管理者(あなた)と提携業者のやり取りが密に発生します。一方のプラットフォーム型(今回はその内のマーケットプレイス型の話)の場合、サイト管理者と提携業者のやり取りはほとんど発生しません。

「半自動化して薄利多売で成り立つ」がプラットフォーム型のメリットですから、やり取りが発生しないように設計して然りですが、“やり取りが発生しない=提携業者のノウハウを盗めない”ということであり、“提携業者のノウハウと盗めない=専門家になるチャンスを逃す”という、ステップアップの道を閉ざしてしまうことにもなりかねません。

これについては、『マッチングサイト構築にシステムは不要!専門家になるための人力運営』にてマッチングサイトのシステム不要論をお話ししていますので、興味のある人は読んでみてください。

6.まとめ

マーケットプレイス型マッチングサイトの『できること』と『できないこと』を解説してきました。

今回のデモサイト日本緑化計画には「仲介料の設定と自動分配」機能が備わっています。これは提携業者への仲介料請求という面倒な作業を半自動化してくれます。また、「商品代金受け取り(代金はサイト管理者に一旦支払われる)」機能も備わっているため、後払い先払い問題にも対応できます。

よって、「顧客側の商品(案件)登録は不要」「商品価格は完全定額」であれば、マーケットプレイス型マッチングサイトは一つの選択肢としてあり得ます

反対に、「顧客側にも案件登録をさせたい」「商品価格が流動的」ということであれば、決済機能や自動分配機能は諦め、エージェント型や、SNSや会員限定サイトに決済機能を後付けするような型の検討が必要です。

どちらが優れている?、どちらが稼げる?、どちらがカッコイイ?という話ではなく、あなたのマッチングビジネスに『必要なこと』『不要なこと』と、システム上『できること』『できないこと』を比較し、スペックを柔軟に最適化し、できれば無料でのミニマムスタートを狙いましょう。

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