弁護士をマッチングしても紹介料はもらえない!
マッチングビジネスは、そのネタ(ユニーク・ジャンル)探しから始まるわけですが、10人に8人が思いつく鉄板ネタがあります。
そう、弁護士のマッチングです。
○○の問題を解決したい人に弁護士を紹介するマッチングビジネスなんてどうでしょう!
もしかすると、同じようなネタを検討されている人もいるかもしれませんね。
ですが、残念ながら、私の回答はこうです。
弁護士のマッチングビジネスはできないと考えた方がよいです。なぜなら、弁護士法などで紹介料の支払いが禁止されているからです。
弁護士法によって紹介料などの支払いが禁止されているため、依頼者を紹介(仲介)して報酬を得るというマッチングビジネスの収益システムを構築できないということです。
今日は、「弁護士から紹介料をもらえない法的根拠」と「合法に報酬を請求する方法」についてお話します。
弁護士から紹介料(仲介料)をもらえない法的根拠を理解しよう。法的根拠を理解すれば、合法に報酬を請求する方法も見えてきます。
……実は、社会保険労務士のマッチングサイトを運営していた私にも、紹介料問題を原因とした事業存続の危機に陥った経験があります。
今日の解説は、弁護士に限らず多くの士業に当てはまるものです。各業法(業種ごとの法律)に定めがありますので、あなたは同じ過ちを犯さないように注意してください。
それでは早速、始めましょう。
※合法に報酬を請求できたとしても、収益が下がるなどのデメリットもあるため、必ずしもこれを推奨するものではありません。
このページの目次
1.私が陥った事業存続の危機
私は社会保険労務士のマッチングサイトを運営していました。
8年ほど前に起ち上げ、その後、約7年間の運営期間を経て、他者に事業売却したものです。
当該マッチングサイトについては「私が3千6百万円を稼いだマッチングビジネスの収益を大公開!」で公開しています。
この事業は私に3千6百万円以上の収入をもたらしてくれましたが、起ち上げ当初からすべてが順調だったわけではありません。
修正の連続であり、最大の修正こそが「紹介料を受領する仕組み」の変更です。
マッチングサイトを起ち上げたばかりの私は、提携業者(社会保険労務士)を獲得するために社会保険労務士会を訪問しました。
社会保険労務士会とは、全国の社会保険労務士が所属する法定団体ですから、「ここに一声かければ、提携したい社会保険労務士の入れ食いになるだろう…うひゃひゃ」と目論んでいたわけです。
しかし、まさかの展開に……
社会保険労務士を紹介するビジネスをしているので、提携に興味のある社会保険労務士を紹介していただけませんか?(食いつくぞ、食いつくぞ……)
そのビジネスは「社会保険労務士法」違反ですから紹介はできません。と言うよりも、運営自体を認められません。
……え。
社会保険労務士を紹介してもらえないどころか、余計なことをしたばかりに違法サイトというレッテルを貼られ、事業存続の危機に陥ってしまったのです。
担当者が言うには、社会保険労務士の業法である「社会保険労務士法」において、社会保険労務士ではない人からお客の紹介を受け、対価(紹介料)を支払うことは禁止されているとのこと。
この後、鬼の担当者と何度もやり取りをし、仕組みを変更し、全国社会保険労務士会連合会(都道府県ごとにある社会保険労務士会の上位機関)の了承を得て、無事に事業を存続させることができました。
計2万文字を超えるメールのやり取りと、私の天才的なひらめき(?)で危機を脱したわけですが、「とにかく始めることは重要だが、当初のリーガルチェックだけは怠ってはいけない」と肝に銘じさせられた出来事でもありました。
2.弁護士から紹介料をもらえない法的根拠
では、今日の本題、弁護士から紹介料をもらえない法的根拠の解説に移りましょう。
2-1.非弁とは?
「非弁」という言葉を聞いたことがある人はいませんか?
「弁護士に非ず」と書き、直訳すれば「弁護士ではない」という意味ですが、次のようなものの略語としても使われます。
- 非弁
非弁護士(弁護士でない人)の略。 - 非弁行為
弁護士でない人が弁護士にしかできない業務をする行為。 - 非弁提携
弁護士でない人が弁護士に依頼者などを紹介して紹介料をもらう提携行為。
つまり、弁護士からお客の紹介料をもらう行為は非弁(非弁提携)と言え、前述の社会保険労務士と同じような業法の定めがあるということです。
では、業法などにはどのように定められているのでしょうか。いくつかの条文を明示しましょう。
2-2.弁護士法の定め
弁護士が遵守しなければならない業法である「弁護士法」には次のようにあります。
弁護士法第72条
(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
出典: 弁護士法
第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
解釈
弁護士でない人は、報酬を得る目的で事件や法律事務などを取り扱うことはできない。また、報酬を得る目的で事件や法律事務などの周旋を業とすることはできない。
周旋とは、売買や交渉などで両者間に立って世話をすることで、紹介や仲介と同義です。マッチングビジネスにおいては、両者間における委任関係など成立のための便宜を図る行為、つまり、あなたの業務がこれに該当します。
弁護士法第27条
(非弁護士との提携の禁止)
出典: 弁護士法
第二十七条 弁護士は、第七十二条乃至第七十四条の規定に違反する者から事件の周旋を受け、又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない。
解釈
弁護士は、弁護士法第72条に違反する人(報酬を得る目的で事件や法律事務などの周旋を業としている人)から、事件などの周旋を受けることはできない。
2-3.弁護士職務基本規程の定め
また、弁護士の職務に関する倫理と行為規範を定めた「弁護士職務基本規程」には次のようにあります。
弁護士職務基本規程第11条
(非弁護士との提携)
出典: 弁護士職務基本規程
第十一条 弁護士は、弁護士法第七十二条から第七十四条までの規定に違反する者又はこれらの規定に違反すると疑うに足りる相当な理由のある者から依頼者の紹介を受け、これらの者を利用し、又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない。
解釈
前記の弁護士法第27条と同義です。
弁護士法第72条に違反する人(報酬を得る目的で事件や法律事務などの周旋を業としている人)から、事件などの周旋を受けることはできない。
弁護士職務基本規程第12条
(報酬分配の制限)
出典: 弁護士職務基本規程
第十二条 弁護士は、その職務に関する報酬を弁護士又は弁護士法人でない者との間で分配してはならない。ただし、法令又は本会若しくは所属弁護士会の定める会則に別段の定めがある場合その他正当な理由がある場合は、この限りでない。
解釈
あくまで私の個人的な解釈ですが、この条文には大きく2つの趣旨があります。
- 弁護士でない人から事件などの周旋を受けて報酬を分配することはできない。
- 弁護士でない人と事件などを共同で受任して報酬を分配することはできない。
他士業の業法などによって容認されている場合には、弁護士との共同受任(報酬分配)が合法となる場合もあります。
弁護士職務基本規程第13条
(依頼者紹介の対価)
出典: 弁護士職務基本規程
第十三条 弁護士は、依頼者の紹介を受けたことに対する謝礼その他の対価を支払ってはならない。
2 弁護士は、依頼者の紹介をしたことに対する謝礼その他の対価を受け取ってはならない。
解釈
ズバリですね。
弁護士は依頼者の紹介(仲介)に対する紹介料を支払うことはできない。
言うに及びませんが、支払いの名目が「紹介料」でなければよいという話ではありません。掲載料、広告料、コンサル料、○○委託料などの名目にかかわらず、その金銭が、どのような目的で、どのような内訳(相場との比較含む)で支払われているかという実質で判断されます。
2-4.前提として、弁護士は地味な集客しかできない
ここまでに、弁護士から紹介料をもらえない法的根拠を解説してきました。
非弁(非弁行為・非弁提携)が固く禁止されていることは理解していただけたはずです。
前提として理解しておかなければならないのは、弁護士(業界)は品性を重要視しているということです。
(弁護士の職責の根本基準)
出典: 弁護士法
第二条 弁護士は、常に、深い教養の保持と高い品性の陶やに努め、法令及び法律事務に精通しなければならない。
高い品性の陶や(陶冶:能力を鍛え上げること)に努めることが義務とされていますから、品性を欠く下劣な集客(営業、宣伝、広告)をした弁護士は業務停止など懲戒処分されます。
民間企業は売上増加に効果的な集客方法を研究し、競うように打ち出していきますが、弁護士にはそれができません。
語弊があるかもしれませんが、厳しい規定の中で地味な集客しかできないのです。
それら規定の細目は次の4つにまとめられていますので、弁護士に関連するビジネスを検討している人はチェックしておきましょう。
非弁(特に非弁提携)に関するものが主ですが、その厳しさにきっと驚くはずです。
とりわけ、平成30年1月18日に議決された「弁護士情報提供ウェブサイトへの掲載に関する指針」には最新の指針が定められています。
「どんなビジネスが非弁と判断されるの?」とイメージが湧かない方の疑問を解決してくれるでしょう。
次項からは、同指針を引用しながら、非弁と判断されるビジネスの具体例を解説していきます。
なお、以下の具体例には私の個人的な解釈を含みます。あなたの検討しているビジネスが規定や指針に違反しているか否かは、各人の責任において判断してください。
3.周旋をしていると判断されるビジネス【4例】
1つ目の具体例は「周旋」に該当するか?です。
「弁護士情報提供ウェブサイト」が、次のア~エのいずれかに該当するときには、周旋をしている、つまり非弁と判断される(疑われる)可能性が高いです。
弁護士情報提供ウェブサイトとは、同指針によれば「弁護士情報を、インターネットを利用して市民が閲覧することができる状態に置いてこれを掲載しているウェブサイト」と定義されています。
「自分のマッチングサイトは弁護士情報を閲覧することができる状態にしないから該当しない」と反論する方もいるかもしれませんが、前述の非弁に関する法規程と照らし合わせて考えると、「弁護士を紹介しているすべてのウェブサイトが該当する」と捉えるべきです。
ア 選別・加工をしてはいけない
ア 提供される弁護士情報の内容について、あらかじめ明示された客観的な検索条件に基づくことなく、情報提供事業者の判断により選別・加工を行うとき。
出典: 弁護士情報提供ウェブサイトへの掲載に関する指針
「弁護士比較サイト」や「弁護士検索サイト」向けの指針ですあり、ポイントは、提供(掲載)のされ方が「あらかじめ明示された客観的な検索条件」のみに基づいているか?です。
一般的には、用意されている検索機能で都道府県別や得意分野別に検索しますが、これによって表示された結果は、あらかじめ明示された客観的な検索条件に基づいていると言えます。
しかし、次のようなウェブサイトは、あらかじめ明示された客観的な検索条件に基づいているとは言えず、周旋(非弁)と判断される可能性が高いです。
イ 便宜を図ってはいけない
イ 情報提供事業者から、閲覧者又は掲載弁護士に対し、弁護士情報(当該情報に基づき提供される法律事務に関する情報を含む。)に係る連絡(全てオンライン上で行う場合を含む。)を、次に掲げる例のような方法で行うとき。
出典: 弁護士情報提供ウェブサイトへの掲載に関する指針
(ア) 情報提供事業者が、閲覧者又は掲載弁護士に連絡を行い、法律相談、事件の受任その他の法律事務の提供の勧奨、面接日時の調整、情報の追加的提供等を行うとき。
(イ) 情報提供事業者が、閲覧者からの相談等の内容を一旦受けて、これを掲載弁護士の選定の用に供するとき。
まさに「マッチングサイト」向けの指針と言えます。
ウェブサイトの閲覧者と弁護士の間に介し、委任関係など成立のための便宜を図れば、周旋(非弁)と判断される可能性が高いです。
ウ 便宜を図らなければよい
ウ 閲覧者と掲載弁護士との間の意思疎通を弁護士情報提供ウェブサイトを介して中継する場合に、当該意思疎通のための通信の内容に加工を行うものであるとき。ただし、当該弁護士情報提供ウェブサイト上において、閲覧者又は掲載弁護士が当該弁護士情報提供ウェブサイトを経由して電子メールを送信することにより直接オンライン上で法律相談若しくは打合せの日時の設定その他の連絡又は法律相談等の法律事務の提供そのものに係る連絡ができる仕組み(当該電子メールについて情報提供事業者がフォームを定め、閲覧者又は掲載弁護士が当該フォームに必要事項を順次入力して作成する方式による場合を含む。)を設けるに過ぎない場合には、ただちに周旋に該当するとは評価しないものとする。
出典: 弁護士情報提供ウェブサイトへの掲載に関する指針
前述のとおり、閲覧者と弁護士の間に介し、委任関係など成立のための便宜を図ることは禁止されていますが、言い換えれば、間に介することなく、便宜を図らなければ周旋(非弁)と判断されない可能性があります。
もっとも、このようなウェブサイトをマッチングサイトと定義するかは判断が分かれるところです。少なくとも私が推奨するマッチングビジネスではありません。
エ 実質的に周旋をしてはいけない
エ アからウまでに掲げるもののほか、情報提供事業者が弁護士等又は依頼者を紹介する旨表示して閲覧者又は掲載弁護士を募っている場合その他情報提供事業者による宣伝広告の内容、情報提供事業者と閲覧者又は掲載弁護士との間の契約内容等から実質的に判断して、その弁護士情報提供ウェブサイトが閲覧者又は掲載弁護士に弁護士等又は法律事務取扱いを紹介するものと認められる場合であって、インターネットによる弁護士情報提供はその一部として行われているものと認められるとき。
出典: 弁護士情報提供ウェブサイトへの掲載に関する指針
ここまでに挙げたア~ウの指針だけでは、すべてのビジネスに対応できません。詭弁(ごまかしの議論)を用い、いわゆる抜け道を探し、周旋をしようとする人も現れるでしょう。
そのため、実質的に判断するということを念押ししています。
4.報酬を目的としていると判断されるビジネス【2例】
2つ目の具体例は「報酬目的」に該当するか?です。
「弁護士情報提供ウェブサイト」が、次のア~イのいずれかに該当するときには、報酬を目的としている、つまり非弁と判断される(疑われる)可能性が高いです。
ア 周旋の対価を受領してはいけない
ア (ア) 情報提供事業者が、閲覧者から金銭その他の利益を受領するものであるとき。
出典: 弁護士情報提供ウェブサイトへの掲載に関する指針
(イ) 弁護士情報提供ウェブサイトが前号アからエまでのいずれかに該当する場合において、情報提供事業者が、当該弁護士情報提供ウェブサイトへの掲載に関し、掲載弁護士から金銭その他の利益を受領するものであるとき。
(ウ) 情報提供事業者が、当該弁護士情報提供ウェブサイトへの掲載に関し、掲載弁護士から受領する金銭その他の利益について、次に掲げる事情があるとき。
a 掲載弁護士が紹介を受けた事件数に応じて算定される場合
b 掲載弁護士が紹介を受けた事件に係る法律相談料、着手金、報酬金、手数料その他の弁護士報酬の額に応じて算定される場合
「金銭」とは、紹介料、仲介料、掲載料、広告料、コンサル料、○○委託料などを指しますが、名目にかかわらず対価を得れば、報酬目的(非弁)と判断される可能性が高いです。
但し、金銭を受領したからといって直ちに非弁と判断されるわけではないことに注意しくてださい。
「合法に報酬を請求する方法」もありますので、次項以降を参照してください。
イ 周旋の対価でなければ受領してもよい
イ アの規定にかかわらず、情報提供事業者が受領する金銭その他の利益が周旋の対価でないと認められる特段の事情がある場合は、報酬目的がある、又はあると疑うに足りる相当な理由があるとは認められないものとする。この場合において、周旋の対価でないと認められるか否かについては、次に掲げる事情その他の事情を総合的に判断するものとする。
出典: 弁護士情報提供ウェブサイトへの掲載に関する指針
(ア) 弁護士情報提供ウェブサイトへの登録、掲載等の期間及びこれに要するスペース、容量等に従い客観的かつ定額的に決まる登録、掲載等の対価にとどまるものであるか否か。
(イ) (ア)に規定する登録、掲載等の対価にとどまるものである場合であっても、情報提供事業者による宣伝広告の内容、情報提供事業者と閲覧者又は掲載弁護士との間の契約内容等から当該弁護士情報提供ウェブサイトが閲覧者又は掲載弁護士に弁護士等又は法律事務取扱いを紹介するものと認められる程度の強さ及びそれと当該金銭その他の利益との関連性が認められるか否か。
(ウ) 弁護士情報提供ウェブサイトにおける登録、掲載等情報提供のみに係る対価の金額の水準との比較
前述のとおり、閲覧者や弁護士から金銭などの利益を受領することは禁止されていますが、それが周旋の対価と判断されなければ、報酬目的(非弁)と判断されない可能性があります。
具体的には次のようなポイントから実質的に判断されます。
5.報酬を分配していると判断されるビジネス【1例】
3つ目の具体例は「報酬分配」に該当するか?です。
「弁護士情報提供ウェブサイト」が、次の指針に該当するときには、報酬を分配している、つまり非弁と判断される(疑われる)可能性が高いです。
ア 当該情報提供事業者と掲載弁護士との間の契約内容等から掲載弁護士が弁護士等の報酬を情報提供事業者との間で分配するものと認められる事情があるとき。
出典: 弁護士情報提供ウェブサイトへの掲載に関する指針
イ 当該情報提供事業者と掲載弁護士との間の契約内容等にかかわらず、掲載弁護士が情報提供事業者と弁護士等の報酬を分配したとき。
いまいちピンとこない方もいるかもしれませんし、「周旋の対価を受領してはいけないと同じ内容では?」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、実際は異なります。かなり厄介な内容です。
……冒頭にて、私が運営していた社会保険労務士のマッチングサイトが事業存続の危機に陥った話をしました。
計2万文字を超えるメールのやり取りと、私の天才的なひらめき(?)で危機を脱したわけですが、この手法は弁護士(会)には通用しません。なぜなら、この指針があるからです。
誤認や悪用を防ぐために危機を脱した手法の詳細は省略しますが、この指針さえなければ、同じような手法で弁護士を紹介するマッチングビジネスを組み立てることができると考えています。
しかし、この万能な指針があらゆる抜け道をふさいでしまっているのです。……いや、抜け道をふさぐのはよいことなのですけどね。
※社会保険労務士会に対しても、現在も同じ手法が通用すると断言する意図はありません。
6.非弁行為や非弁提携の罰則は?
弁護士から紹介料(仲介料)をもらえない法的根拠や具体例を解説してきましたが、罰則についても触れておきましょう。
非弁行為や非弁提携を行った場合、2年以下の懲役、または、300万円以下の罰金に処されます。
弁護士法に定められた罰則の中では、比較的に重いものです。
(非弁護士との提携等の罪)
出典: 弁護士法
第七十七条 次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
一 第二十七条(第三十条の二十一において準用する場合を含む。)の規定に違反した者
二 第二十八条(第三十条の二十一において準用する場合を含む。)の規定に違反した者
三 第七十二条の規定に違反した者
四 第七十三条の規定に違反した者
また、経験から言わせてもらえるなら、違反と疑われるようなビジネスもすべきではありません。懲役や罰金は誰もが避けたいところでしょうが、弁護士会とのやり取り(紛争)も避けるべきだからです。
少しでも疑いをかけられようものなら、すぐに警告書(内容証明郵便)が届きますが、弁護士(会)の文章は独特であり、趣旨を読み解くだけでも一苦労です。
そして、趣旨に沿って漏れなく、且つ、言い負かされない程度の回答書を作成しようと思えば、一日仕事にもなりかねません。
(火のないところに煙は立ちませんが、それでも弁護士の言い分が正しいとも限りませんから、応戦しなければならないこともあります)
とても貴重な経験ではありますが、この種のストレスは味わいたくないものです。
7.弁護士に合法に報酬を請求する方法
さて、ここまでの解説で、冒頭で「依頼者を紹介(仲介)して報酬を得るというマッチングビジネスの収益システムを構築できない」とお話した理由は理解していただけたと思います。
一方で、弁護士に合法に報酬を請求する方法も見えてきたのではないでしょうか。
7-1.弁護士法、各規程、各指針に違反しないこと
「合法に報酬を請求する方法」を言い換えると「弁護士法、各規程、各指針に違反せずに報酬を請求する方法」ですから、「こんなウェブサイトはOK」とした3つにヒントがありそうですね。
これらを突き詰めていくと、ポイントは次の2つに集約されます。
- 相談者と弁護士を直接やり取りさせる(介入しない)。
- 報酬を、掲載などの期間やスペースなどによって定額的にする。
弁護士に合法に報酬を請求する方法が見えてきたのではないでしょうか。
方法はいくつかありますが、ここではシンプルな2つのビジネスモデルを解説しますので、あなたなりのビジネスを構築するヒントにしてください。
※繰り返しですが、合法に報酬を請求できたとしても、収益が下がるなどのデメリットもあるため、必ずしもこれを推奨するものではありません。
7-2.純粋な広告なら報酬を請求できる
ビジネスモデルの1つ目は、「広告を掲載して、広告料を請求する」です。
純粋な広告を掲載して、掲載などの期間やスペースなどによる定額的な報酬を受領するモデルであれば、弁護士に報酬を請求できる合法なビジネスとなります。
例えば、次のようなビジネスです。
7-3.直接やり取りできるシステムを搭載するなら報酬を請求できる
ビジネスモデルの2つ目は、「直接やり取りできるシステムを搭載して、システム利用料を請求する」です。
根本は、前述の「広告を掲載して、広告料を請求する」と同じですが、これに、直接やり取りできる場(システム)も提供するモデルです。
多くの場合、相談者側と弁護士側それぞれに個別ページ(マイページなど)を付与し、相手方と1対1のやり取りができるようにします。
場(システム)を提供し、システム利用料として定額的な報酬を受領するモデルであれば、弁護士に報酬を請求できる合法なビジネスとなります。
相談者からすると、ひとつのウェブサイト内で複数の弁護士とやり取りできるため、効率よく比較検討をすることができます。
また、第三者(あなた)監視の下でのやり取りとなるため、押しの強い営業に悩まされたり、断りにくいなどのストレスを感じなくて済みます。
人によっては、これをマッチングビジネスと定義するかもしれませんが、私は、そうは定義していません。なぜなら、私は常に「マッチングビジネス=仲介ビジネス」と話しており、単なる紹介業に過ぎないこのモデルとの間には雲泥の差があるからです。
間に介し、それぞれの情報を掌握するからこそ専門家としての権威をまとうことができるからです。詳しくは『マッチングサイト構築にシステムは不要!専門家になるための人力運営』で解説しています。
8.最後に
弁護士に対して相談者や事件を紹介するマッチングビジネスを構築することはできません。
私自身も、合法に紹介料を受領する方法を模索し、また、弁護士と協議したこともありますが、実現は難しそうです。
あなたは、懲役や罰金、弁護士会から警告書が届くリスクを負ってまで弁護士に提携を持ち掛けますか?
また、非弁は弁護士業界全体の信頼を大きく損ねるものであり、弁護士を指導監督する弁護士会が特に目を光らせている違反であると言えます。
会内には非弁対策本部などが設けられ、当然に、非弁に関与した弁護士は業務停止など懲戒処分されるわけです。
あなたが弁護士なら、業務停止処分のリスクを負ってまで紹介料を支払いますか?
万が一、紹介料を支払ってくれる弁護士と提携する機会を得たとしても、それは千載一遇のチャンスではなく、泥船渡河のリスクを背負うことに他なりません。
あなたも弁護士も破滅への道を進むことになりますので、浅知恵や楽観で足を踏み入れることはお奨めしません。
弁護士を紹介するマッチングビジネスの参考になったなら、次回のシェアも楽しみにしていてください。