都市型洪水と緑化
2000年9月12日は、豪雨の影響により新幹線で50,000人が夜を明かしたというニュースと、名古屋市内の浸水のニュースで持ちきりとなっていた。
状況が落ち着いてくると、いわゆる都市型洪水の原因の1つは、「水が染み込む自然の土地が減ったことにあり、今回の洪水の一因ともなったのではないか」という論調の解説が聞かれるようになってきた。
都市化の進行は確実に都市の雨水浸透能力を奪っていき、瞬間的な大雨に対する耐久性が低下してくるというのは疑いのない事実である。しかし、このときの名古屋のような持続性のある大雨に対しては、いくら緑地面積が大きくても対処するのは難しい。
この年、東京都内では夕立によって地下鉄に水が侵入するトラブルが数回続いたが、こちらの方は典型的な都市型洪水と言ってよいだろう。
こういった災害に対しては下水道の排水能力の向上、遊水施設の設置など、都市インフラの整備によって対処するというのが本筋である。
しかし、こういった施設の拡充、新設には多額の費用がかかる上に、整備されるまでに非常に長い時間を要するという問題がある。そこで、こういった対処療法的措置だけでなく、都市全体での雨水排水量の低減という視点での対策も求められるようになってくる。
都市の緑地も雨水排水量の抑制効果を持っている。
土壌というのは、土木構造物や建築物を建てる場合には「しめ固まって隙間が少ないものほどよい」と評価されるが、植栽基盤として見た場合は全く逆で「隙間が多く柔らかいものほどよい」と評価される。
こういった地面は、透水性・保水性に優れており、「植栽基盤整備技術マニュアル(案)」によれば、地表面での透水速度が30mm/時以下は不良、30~100mm/時で可、100 mm/時以上が良とされている。
透水速度が100mm/時ということは、100mm/時の雨であっても、周囲に排水することなく、すべて現地で浸透させることができることになる。
※100 mm/時というのは、とんでもない豪雨であり、瞬間的にはともかく、これが1時間以上継続することなどまずありえないと考えて良い。
したがって、良好な排水性を有する緑地は、外部に対する排水負荷を全く増加させずに済む施設であり、500mm/時程度の降雨であれば、緑地と同面積の非透水性敷地の排水を受け入れることも可能な排水施設となり得るということになる。
これと同じような効果が、屋上緑化にも期待できる。屋上緑化には、雨水貯留の効果と、雨水排出の遅延効果という2つの効果があるのだ。
参考文献
屋上・建物緑化事典