ヒートアイランド現象

ヒートアイランド現象と緑化

1.ヒートアイランド現象とは

ヒートアイランド現象というのはある地域が周辺部より高温になる現象を指す。
これは様々な原因で生じる現象であるが、研究が始まった当初は大都市において、主に冬季の夜間に気温が周辺地域より高くなる現象として捉えられていた。

このような研究は日本では昭和30年代位から盛んになり、それを裏付けるようなデータが多数収集されてきた。
このようなヒートアイランド現象というのは冬の夜が暖かくなる気象変化であるから、これは別段意味嫌うようなものではない。ただし、もともとヒートアイランドというのは、スモッグなどの大気汚染とセットで語られることが多く、なんとなくマイナスのイメージを持ち合わせていたというのは確かである。

その後研究が進み、ヒートアイランドは都市構造そのものに起因して発生し得るということが明らかになってきて、大気汚染と切り離した議論もできるようになった。

それならば積極的にヒートアイランドを誘引するような都市計画を策定しようという動きもカナダなどで見られた。実際にそれが実行されたかどうかはわからないが、高緯度地域の都市において積極的にヒートアイランドを活用するというのは理にかなった方策であると言えよう。

2.冬季夜間のヒートアイランド

東京においても、このように、冬季、夜間の気温が上昇しているということは、気象庁のデータを見れば一目瞭然である。特に厳冬期の最低気温は著しく上昇している。
季節別、時間別に解析してみると、冬季の最低気温が最も上昇していることが確認できる。よくニュースなどで、「東京の平均気温はここ50年間に〇〇℃も上昇して…」と言っているが、実はこの平均値の上昇は、ほとんどすべてが冬季、夜間の気温上昇によってもたらされているのである。

このような冬季の気温上昇は、都市構造(凸凹)や生活排熱によって生じるものであり、これを緑化によって解消するというのは理屈の上から言っても無理である。と言うよりも、そもそもこういった冬暖かくなる現象を抑制する必要など全くないのである。
高温化によって生態系が乱れるという意見もあるが、そのような影響は、他の開発行為による撹乱に比べればないに等しい程度のレベルである。

3.夏季日中のヒートアイランド

日本において本当に抑制すべきなのは、夏季日中のヒートアイランドである。

夏季日中の都市内の気温上昇は古くから確認されており、実際、測定を行えば、多くの都市で普通に見られる現象であることがわかる。しかし、この現象は、冬季のヒートアイランドとは異なった原因で発現している部分が大きいのである。
例えば、気象庁がある大手町の観測データを解析してみると、盛夏の最高気温はほとんど上昇していないことがわかる。これではヒートアイランドは生じていないことになってしまうのである。

夏季日中のヒートアイランドの主たる原因は、コンクリートやアスファルトで覆われた土地が真夏の強烈な日差しによって表面が非常に高温となり、その場所の直上の空気が温められて気温も上昇するのである。結果、その場所にいる人に熱的な負荷を与えるわけだ。

これ自体は極めて局所的な現象であって、アスファルトに覆われた部分の面積が小さければ、単なる微気象現象として片付けられる程度の話である。ところが都市が拡大し続けた結果、街中のどこを見渡してもコンクリートとアスファルトばかりという状態に至ると、この微気象現象が連綿と連なって、どこへ行っても暑いという、比較的大きなスケールの現象を形成してしまうのである。

つまり部分的に暑かった状態が際限なく広がってしまって形成されるのが、日中のヒートアイランドということになる。

4.ヒートアイランドと緑地

そのような都市空間の中に、土や植物で覆われた緑地空間が形成されると、今度は逆にそこには局地的に「低温なエリア」が掲載されることになる。都市の緑地のありがたさは真夏にこそ実感できるのである。

気象庁は「地上気象観測指針」に従って気象観測を実施してきている。この指針の中には、気象観測点の設置場所についても細かな規定がなされており、それを読むと、“風通しの良い600平米以上の芝生内で測定を行うように”と書かれている。

つまり気象庁の発表する気温は、緑地内で測られたものなのである。したがって、ここで測られた値からは、四谷交差点の酷暑を想像することができないわけである。

このヒートアイランドを緩和するためには、水の蒸発する面を増やすというのが現実的な対処方法となる。様々な工学的手法も考案されているが、コストやメンテナンスを考えると、土と植物で覆うというのが1番現実的な対処方法である。
といっても、今ある道路や建物を撤去して地面を露出させるなどという考えは現実的ではない。坪何千万円もする土地を使って都市を冷やすなどというのは、誰が考えても馬鹿げている。

そこで、建物を残したまま、その上に自然の土地を再生する方法を考えてみると、これは屋上緑化そのものになるということになる。微気象現象の連続体である日中のヒートアイランドの緩和対策のためには、できるだけ人々の生活空間に近い場所で表面温度を下げることが有効である。

その意味では、高い場所にある屋上緑化は不利なのだが、都市内の風の流れを見てみると、建物表面に沿った気流が形成されており、屋上の空気も地表付近にまで達することも多い。したがって建物表面での対策というのも、ヒートアイランドに対して一定の効果が期待できるのである。

5.参考文献

屋上・建物緑化事典

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